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手塚さん しけたさん


「鋼鉄の少女たち」対談
-第2回-
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第4部
★テロリズムと鋼鉄世界★

しけた

 あ、そうそう。そういえば、今話題のテロ組織って全部、基本的に元々はアメリカの下部組織なんですよね。
 田中宇さんあたりは、だから911テロもアメリカの陰謀だって騒いでるみたいだけど(笑)


手塚

 エア・ランド・バトル戦術を導入する前に使われていた、人間爆弾だよね、彼らは。


しけた

 指揮系統(C3I)の破壊っていう目的達成のために、命を安価に捨てられる現地不正規兵を敵の後方に配置した、という訳ですね。


手塚

 そうそう。だから、彼らはアメリカの予算でそろえた武器を持って、アメリカ流の訓練を受けてるわけ。
 ところが世の中の進歩というのは残酷で、IT化が進み、誘導兵器が高性能化して、彼ら人間爆弾が要らなくなった。
 すると、いらなくなった人員に対して組織が考えることはただ一つだ。


しけた

 ・・・リストラですねぇ・・・(遠い目)


手塚

 ・・・さすがは元サラリーマン、察しがいい(笑)


しけた

 すると、いまの一連の戦争って、要は、ITでリストラされた社員が徒党を組んで、自分たちの首を切った大会社に嫌がらせをしている、という状態な訳ですね。


手塚

 それは、きわめて正確なたとえ話だと思うね。
 つまり、彼らテロリストも、はじめっから会社に(米国に)勝つ気なんてさらさら無い。
 ただ、そのままのたれ死ぬのは癪だから、嫌がらせに爆弾抱えて突っ込んでるだけ。


しけた

 まるで、わが身のことのように身にしみる話ですね・・・


手塚

 身にしみすぎて、物語にもなりゃしない。


しけた

 とほほほほ。それで、アメリカ以外の国って、ターゲットになりにくいんですね。


手塚

 そうだねぇ。民間相手のテロだけはアメリカ以外の国が狙われてるけど、結局、それも、アメリカがその背後にいる場所がターゲットだしね。


しけた

 まぁ、日本でも近いうち、確実にテロられますよね。
 でも、何で今になってC3I破壊なんですかねぇ?


手塚

 ん?


しけた

 指揮系統破壊の話ですよ。二次大戦の前まではそういう発想って決して主流じゃ無かったですよね。
 効果的な戦術なのはわかりますが、敵の後方に送り込むのは別にミサイルじゃなくっても良いわけで・・・。
 それが、当時まではあくまでも傍流の「卑怯」な戦術とされていたのは、なぜなんですかねぇ?


手塚

 そりゃあ、総力戦思想が蔓延した結果だよなぁ。
 結局、それまでの戦いっていうのはプロの殺し屋同士の戦いで、何だかんだ言っても兵士自身にも戦う理由があった。
 でも、徴兵や、それに準じる兵士募集システムが蔓延した結果、敵の兵士は、事実上敵国民とイコールになってしまった。そのために、敵の兵士といえども、たとえばまとめてブルドーザーで埋めるとか、そうした手荒なことはしにくくなってしまった。


しけた

 ま、そりゃそうですよね。
 志願兵ならともかく、無理に徴兵された敵の国民を皆殺しじゃあ、そりゃ、虐殺ですよ。


手塚

 そういう人道的な理由もさることながら、政治的な理由も大きいよね。
 せっかく戦いに勝って相手の国を影響下においたのに、親兄弟や恋人を自分のとこに殺された連中ばかりが住んでるんじゃあ、おちおち利益も上げられないからね。


しけた

 なるほど。アメリカが指揮系統破壊戦術にこだわるのは・・・


手塚

 二次大戦と朝鮮戦争、それに、ベトナム戦争あたりで懲りたんだろうね。
 日本、韓国、ベトナムでは、いまだにアメリカを嫌う人は半数近いからね。
 おかげで、日本や韓国には高コストをかけて常に駐留軍をおかなきゃいけない状態が続いているし、貿易的にもとにかく相手国民に好かれるよう、コストをかけて優遇しなけりゃいけない。
 対ベトナム戦にいたっては、国民全員の抵抗にあって、あんな二流国家に負けちゃった(笑)
 ・・・だったらば、兵士を殺す以外の方法を考えないといけない。


しけた

 なるほど、指揮系統を破壊すれば、志願兵ならともかく、徴兵された一般人は、あっさり投降しますもんね。


手塚

 そうだね。あとは、仮想敵国の上層部や富裕層にワイロを送って、こっそりと敵国を混乱させておく、というのもとても大事だね。


しけた

 ちょうど「鋼鉄の少女たち」も、そういう時期にあるんですよね。「連合」はアメリカ、「王国」が昔の日本ってわけで。


手塚

 まぁ、これはあくまで物語だから、決してそのまんま日米の関係ではないけれど、近いようにしてはあるよね。
 でも、だからこそ、捕虜の話とかができるわけで。


しけた

 「王国」の上層部も、見事に腐ってますしねえ。


手塚

 でも、実は「連合」側も総力戦は初めてだから、そこまで上手に捕虜の扱いや指揮系統破壊が戦えるはずも無い。
 ゆえに、「連合」の全兵力が、か弱き乙女たちに向かう、と。・・・悲惨だねぇ。


しけた

 ・・・悲惨ですねぇ。でも、そう考えると、その悲惨さゆえに、ロマンの入り込む余地もあるんですよねぇ。


手塚

 まぁ、戦争なんて、悲惨に決まってるしね。『萌え』なんていう訳のわからない私の自分勝手な理由だけで、戦争をただ単に格好よく描いてしまったら、それこそ人倫にもとる、というものだよ。


しけた

 こういうのを描いてて思いますけど、戦争って絶対に嫌ですもんねぇ。


手塚

 そうだね、どんな資料を見ても、ともかく悲惨の一言だからね。


しけた

 とにもかくにも、戦争反対、と。


手塚

 うんうん。


しけた

 ・・・とまあ、きれいにまとまったところで、今回はこの辺で。ですかね。


手塚

 じゃあ、私は家に帰って、療養の続きをします・・・


しけた

 ・・・お大事に・・・

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