日記のページロゴマーク 2002年7月26日



 
 ■コーヒーはどこから?

 で、これで終わらないのがSIGGRAPH。
 最後に良いことが待っています。
 それは、皆さんへの御挨拶。
 ただ、日本の方は皆さん照れ屋で、こういうの苦手みたいです。
 私は日本人ながらこういうの好きなんで、あちこち走り回って、挨拶挨拶。



 今年、なぜか度々お世話になった、韓国の大学の先生方。皆さんお若い!
 これは、近々韓国が大ブレイクの予感です
 ちなみに真ん中の先生が一番偉い人なのですが、偉大なリボンの群れの中に、パスファインダーリボン(いわゆる迷子バッヂ。SIGGRAPHではこういう罰ゲーム的な遊びもあるんです)が燦然と輝いています(笑)。何でも、自分の論文の場所がわかんなくって、本気でパスファインドしてもらったそうな。先生、大いに自慢していました。ううん、凄い。




 インターナショナルセンターのヌシの風格のある小林君。
 色々な人の情報を聞くけど、みんな今朝方帰っちゃったとのこと。
 ううん、今朝の体調悪が失敗だったなあ。
 みんなに御挨拶をしそびれた・・・




 MEDIAの方々。
 いや、皆さん最終日まで粘りに粘っていました。
 すごい!




 で、初めて話しかけたのが、BallRoomC仲間のこの方。一番右端の人が会話のきっかけのAlex君といいます。
 やっぱり例によって、VAIO-U1から話しはじめです。

 この人、いつもお仲間と一緒にいるところでお会いして、すっかり顔なじみになって挨拶はよく交わすのですが、なぜか今まで一度も会話までいたりませんでした。
 で、何で今まで会話しなかったのかというと・・・面白いことが判明。
 なんと、彼ら、イタリア人だったんです。
 英語が苦手なことでは定評のあるイタリア人が、これまた英語が苦手なことでは人語に落ちない日本人相手に英語で話しかけるシチュエーション。そりゃ、会話を仕掛けにくいわけです。
 今回は、私が妻にSIGGRAPHの報告電話をしている最中に話しかけて来たんですが、なるほど、電話中ならあまり英語で会話をしなくても何とかなるもんね。考えたな、Alex。

 でも甘い!!!
 私、手塚は「明るいロシア人」と同じくらい世界の常識に反した「おしゃべりで人懐こい日本人」なのだ。
 そんな私がイタリア人とお友達になるチャンスを逃すはずが無い。
 早速妻にそのことを告げ、電話を切り、アタック開始!

 で、聞けばやはり、英語は聞くのは出来るけど、話すのは苦手、とか。
 なるほど、それじゃあ私と一緒だ。
 さっそくそういう話で盛り上がります。
 中でも紅一点の美人Elisabettaは、PhDの正課生なのに、英語が無茶下手。私よりも下手なんだから、凄いぞそりゃ。おいおいおいおい。それで論文だいじょうぶ?(^^;
 とはいえ、実は私も社会人大学院の修士課程にいながら、仕事にかまけて丸一年間何も単位をとっていなかったりするので、御同様かも。
 で、VAIO-U1の話。
 前から、あの日本人、小さいパソコン使ってるなあ、とは思っていたそうですが、まさかここまでの機能とは思っていなかったみたいです。次々にソフトを動かして見せるたびに、大きな驚きの声が上がります。
 中でも、3ds maxまで動いたのは本当に驚いたようで、一通りの説明を聞いた後で、「・・・で、コーヒーはどこから出るの?」だそうです。(笑)
 聞けば、イタリアの小型パソコンは、せいぜいがiBook止まり。前から日本の小さなパソコンが欲しかったそうですが、まさかここまでとは思っていなかったみたい。「今度買えるだけのパソコンを持って、イタリアに来い」と真顔で無茶を言います。
 SONYさん、狙うんなら、イタリア市場ですよ!(笑)




 で、最後に、みんなで写真をパシャり。
 日本に帰ったら、メールで送るからね!

 
 ■注意!SIGGRAPH論文投稿方法が少し変わります!

 で、その後 Paper Chair から、いくつか発表が。



 まず、SIGGRAPH随一の人気者のSpikeさん。今年限りでChairを降りるようです。本当なら、とても残念。
 彼の活弁を聞きにSIGGRAPHに来ている人も多いのに。(いや、マジで面白いんですよ?私も彼の大ファンです)




 ちなみに、来年から、論文投稿基準が変わるそうですから、注意!






 他にも、来年の論文の日程変更を考えているそうで、一般から意見を募集中。メールを受け付けているそうです。
 会場でも拍手の大きさでどちらか決めようとしていましたが・・・
 さすがにその場では決めづらいらしく、メール投票に持ち込まれました。

 でもやっぱり、1番の月曜から木曜までに日数増、でしょ?
 採用論文数が増えるように、みんなでがんがんメールしよう!!

 
 ■Paper:Non-Photorealistic Rende

 続いてカニ移動のペーパー。
 演者の飛行機の都合で順番が変わって、スターウォーズ・エピソード2の論文が、先にやっちゃってました。残念。



 でも・・・おお、いたいたいたいた!
 Overviewのときの、頭真っ青のトゲトゲの人!
 やっぱりこの手の人は、どこの国でも最終日に回されちゃうのね(笑)
 しかしこの、トゲトゲの彼、なんと、外見と正反対のきわめて正統派のお堅い論文を発表。口調も中身も、日本の学会の学会賞でも取れそうなほど上品で、ガッチガチにお堅い!(Painting and Rendering Textures on Unparameterized Models / David (grue) DeBry, Jonathan Gibbs, Devorah DeLeon Petty, Nate Robins)
 内容は、3Dペインティングの次世代の方向を探る、堅実で面白い話。いや、こりゃすごい。
 でも、作り上げた事例がなんともアーティスティックで、不気味この上ないところが、なんともトゲトゲ君。
 こういうの、ソフトウェアに実装されるの、早いんじゃないかな。




 続く論文。(Stylization and Abstraction of Photographs / Doug DeCarlo, Anthony Santella)
 お、こりゃ大当たり。
 2Dの絵画風処理の問題の論文。
 最終日はこういうのがあるから面白い。
 まず、この論文が今までと違うところは、人の視点の動きから統計的に必要箇所を取り、それ以外を代表色で塗り潰すことによって色を捕らえるところ。
 この手の絵画調ノンフォト最大の問題であるエッジ処理には、通常のエッジ検出を使用。ただし、そのセグメンテーションには、ピクセルや色を基準にした通常の処理をヒエラルキー化して多重処理する。例えば、顔全体の子供として、精度を高めてセグメントした目の部分のエリアを上のレイヤーに載せる、といった具合。そうすることで、先ほど統計的に決定した推測視点部位ごとの分割精度を変えられるという仕組み。で、推測される視点位置にあわせてヒエラルキーの階層数を整数化してグラデーションさせる、と。
 ・・・ううん、シンプル!
 色やコントラストのとり方もシンプル。変化のあるカーブにフラクタルウェーブをかけて多少のブレを作ってから、カラーエリアを区切る手法。
 で、最終的に、それを合成、と。
 うん、シンプル、かつ、素直。そして役に立つ。
 論文はこうじゃなくっちゃね。

 こういう、認知的視点と、従来の計算処理の組み合わせ、今年は多いですね。こういうの好きなんで、うれしい限り。全体を難しい単独式で削りあげるのではなく、単純に複数回の処理をした後で重要領域を選んで残すやり方だと、一般環境でもすぐにでも実現できるから、弊社のマンガにも早速応用するつもりです。レイヤー構造で、簡単にヒエラルキーも組めるしね。
 ただこのやり方、動画だと、フレーム間の色化け問題があるのね。
 まあ、そりゃそうか。でも、ライン化まで行っているんだから、後一歩ですよね。ありきたりだけど、動画のメッシュ化とかそっちの方の技術と組み合わせて視線認知の方の研究を進めて行けば、来年には解決してるんじゃないかな。

 で、次は・・・うは、こりゃつまらん。
 いくら演者の飛行機の都合で順番が変わったとはいえ、これが今年のSIGGRAPHのトリというのはきついねえ。
 受けを狙ってビデオを流すんだけど、論文内容の貧弱さはどうしてもカバーできず。
 なんだか、とほほな感じです。つまんない内容の論文でパス変形のギャグ飛ばされても、ねえ・・・。会場を困った感じの笑いが埋め尽くします。




 ・・・で。
 いまさらよそへも行けないし、さっそく、隣にいた数学者の先生Davidと雑談モード。なんでも、手塚の持つこのとっても小さいVAIOが、今まで気になって気になって仕方が無かったんだそうだ。なるほど、あなたもか。
 そこで、目の前の論文のものよりも明らかに出来が良い、自分の会社のノンフォトレンダーをU1で見せる。大いに喜ばれ、論文そっちのけで盛り上がる。あ、もちろん論文発表中なので、二人とも前を向きながらのこっそり会話。ナイトショットで写真とったけど、変ですねえ。
 ちなみにDavid先生、よほどつまんなかったらしく、私との会話が終わると、論文発表中にも関わらず、とっとと自分の大学に帰っちゃいました。マンガが大好きだって言ってたから、後で大学にマンガ送ってあげよっと。

 
 ■panel:Games

 で、午後は期待のPanel。
 「Games the Dominant Medium of the Future」というなかなか凄いタイトルで、ゲームの今後についてアメリカゲーム会の重鎮が語り合う、という内容でしたが・・・



 一言で言って、ううん・・・だめだこりゃ。
 誘ってくださった深野先生や杉山先生には申し訳ないけど、早々に退散。

「ゲームが持つ社会的役割は? パネラーの答え:バーチャルな役割体験は人生に大いに役に立つ・役に立たないから今までのスポーツに帰れ・戦争体験を子供にさせるのは反対」「2Dと3Dのどっちがいいの? 答え:制作コストがどうのこうの・結果として面白ければそれで良い」などなど・・・

 どれも、日本ではすでに10年も前に議論し尽くされたようなことばかり。まるでPS2が発売されたときの朝日新聞レベル。
 やはりアメリカは、まだまだゲーム文化という点ではまったくの後進国なんですね。
 ネットゲームもアメリカが一時的に押していたけど、今は韓国・日本に遠く及ばなくなってきています。この間の抜けたパネルディスカッションから、その理由が良くわかります。

 あのね、日本や韓国のクリエイターはね、「果たしてゲームが社会に役立つだろうか?」と悩みこむのではなく、「ゲームは必ずや社会に役立たせ無ければならない。だから、こんな機能・メッセージを盛り込むんだ!」とやるんですよ。ハリウッドでは、みんなで映画に対してやっていることでしょ?それをゲームにもやるんです。それだけのこと。
 ゲームの制作には大金がかかります。そして、社会の役に立たないものに、大金が集まり続けるわけ無いんです。
 つまり、クリエイターは、彼(女)が作るものが、ゲームだろうが映像だろうが、生活し続けるために社会に貢献する責務があるんです。
 社会を変える意気込みの無い人間が、クリエイターを名乗っちゃいけませんよね。

 結局、アメリカでは映画は文化であっても、ゲームは文化ではありえないんですね。


 
 ■SIGGRAPH最終日午前中もろもろ

 いや、朝から体調最悪。
 こりゃ、完全に過労ですね。昨晩早めに手を打ったので二日酔いは避けられたのですが、水をがぶ飲みしたせいで、代わりにお腹が痛い・・・
 でもSIGGRAPHもついに最終日。あと、ひとがんばりです。

 学会の最終日が緩みきっているのはどこの国も同じな訳で・・・
 結構とんでもないものが見られるのも最終日の特徴。





 取り忘れていたArt Galleryの撮影をして、STUDIOでざっとソフトを見学して・・・と、休み休みのんびりとやっているだけで、結構色々なことに出会います。

 で、最終日らしい話、その1。「風船割り」
 会場の一部をアーティストに貸し出して行う、一種のゲリラアートがところどころにあったのですが、最終日だけあって、そこも撤退作業に入っていました。
 で、そこでの一幕。
 風船を大量に使っていたアートだったのですが、それを、アートのメンバーの女の子が、ぴょンぴょん飛び跳ねながら割りまくる割りまくる。
 相方の男の子がそれを邪魔したり手伝ったりで、これがまた、一種のアートイベント。
 観客は、私も含めその場にいた数名だったけど、非常に面白い場面でした。
 もちろん拍手で送りだすと、アートゲリラの人たちもまんざらでも無い様子で両手を広げ、大きく礼。
 一瞬だったので写真は撮り逃したけど、良いですね、こういうの。

 その2。「VAIO-U1大人気」
 ようやく人の心に余裕が出てきたのか、私の持つVAIO-U1に、いまさらのように注目が集まっていました。
 ・・・というか、一週間も一緒にいたから、みんな、話すきっかけが欲しかったのかも。何だかんだ言って、常時会場にいるメンバーってせいぜい数千人だから、まじめに来ている連中同士で顔、覚えちゃうんですよね。つたない英語ながら、色々な方とお話しました。特に私は、日本人で、Pressで、いっつも小さなパソコンを持ってBallroom C 近辺にいる変な奴だったから、覚えやすかったのかも。
 Pressラウンジあたりは昨日の午前中くらいまで皆で殺気立っていたから、彼らの場合には、その、仲直り的な意味もあったのかもしれません。
 そして皆、「See you Next SIGGRAPH!」で、一年間のお別れです。




 その3。「ゲリラ・プレゼン」
 会場のあちこちで見られたのが、若い人間が年寄りを捕まえてプレゼンをしている姿。
 SIGGRPHはこういうところ判りやすくって、年寄りで、バッヂにリボンをいっぱいつけていれば、とりあえずプレゼンする価値のある人物ですからね。
 最終日だけに、会社を立ち上げようと思っていたり、アイディアを売り込もうと思っている人たちが、皆、必死です。
 いやあ、実はこれ、私も去年やりました(笑)
 今年は特に最終日にばたばたとプレゼンするような事は無いのですが(さすがに今年は余裕を持って、主要な方々にはすでにプレゼン&名刺交換済みなのです)、なんか、こういうの良いですね。

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