日記のページロゴマーク 2002年7月24日



 
 ■Emaging Technology

 後は、Emaging Technologyを見ました。
 これは、最新テクノロジの応用を色々な形でプレゼンする場。
 参加団体のほとんどが日本の大学で、びっくりしました。
 今年は、SketchとEmaging Technologyは。ほぼ日本が占領していましたね。











 
 ■ワンパウンドハンバーガー

 今晩はSIGGRAPH東京の日。
 ですが、仕事が押してしまっているので、今晩は夕食を編集の人(I社のW氏)と一緒に食べました。
 サンアントニオは観光地。従ってうまいレストランは山ほどあります。
 ・・・・でも、私もW氏も相当に忙しく・・・



 結果、こうなりました。
 これがテキサス名物、ワンパウンドバーガー。
 別に広角レンズを使っているわけじゃありません。実際に人の頭よりもでかい大きさで、12ドルです。
 安くてうまくて異常なくらいの量があります。
 私ははじめから半分を切り取っておいて、持ち帰り用に詰めてもらいました。
 で、「Doggi bag Please.」
 ところが、こんな簡単な英語が通じない。
 発音が悪いのかと何度言い直しても通じない。
 しまいには犬がどうかしたのか、と聞いてくる始末。
 ・・・もしや、と思い、言い方を変えてみる。
 「Take out bag Please.」
 Sure、の一言で、バッグ登場。
 どうも、ドギーバッグ、って言う言い方は、テキサスではしないみたいです。
 同じ国内でも言葉が違うのだから、アメリカって広い。


 
 ■再びエキシビジョンへ

 そして昼食。
 今度はエキシビジョン会場のレストランで食べてみた。



 ええっ!?
 これで9ドル!?
 スモールサラダとダイエットコークだけで、日本円にして約1100円。べ、べらぼうな値段です。

 その後、午後もPaperに没頭、と思いきや、仕事が私を待っている・・・
 なんか、こういう状態だと、来年はMEDIAバッヂをはずして完全な一般人で来ようか、なんていう気もしてくる。でもまあ、仕事があるのはありがたいこと。文句を言ってもしょうがないしね。
 でも、やっぱりPaperが気になり、ぎりぎりまで見続けることに。
 午後は、3D Acquisition and Image Based Rendering の部屋に。
 実は、イメージベースドレンダーっていまいちわかんなくって、論文を聞きながらそれを理解するのが、今回の目標。

 いよいよ開始。
 つらつらと論文が流れる。
 1本目、2本目・・・
 ううん、なんと言うか、普通の論文。このジャンルはここ数年間が当たりばかりだっただけに、難しいのかなあ。
 でもまあ、各論文の頭に話す概要のお陰で、大分理解は出来てきた。
 そして、3本目。(Light Field Mapping: Efficient Representation and Hardware Rendering of Surface Light Fields / Wei-Chao Chen, Jean-Yves Bouguet, Michael H. Chu, Radek Grzeszczuk)

 こりゃすごい!
 めちゃくちゃおもしろい!
 イメージベースレンダリングをハードウェアレンダーレベルにまで落とした実践的な
内容で、斬新、というわけではないけれど、まさに必要とされている研究。
 しかし、発表が始まってまもなく仕事の時間が迫る。インタビューの仕事なだけに、遅刻するのは難しい。
 そして・・・<この論文のどこがつまらないんだ!?><いや、日本人はわかんないねえ>、という雰囲気の中、ボールルームを出て、エキシビジョン会場に。
 ・・・とほほほほ・・・

 で、エキシビジョンは、それなりに収穫あり、でした。paperの代わりというわけではないけど、結構楽しめました。
 昨日と違い、今回はインタビューも多いので、詳細な話を聞きつつ、色々な最新ベータ版ソフトを見まくり、触りまくり、という感じ。




 資料が多くて、さすがにリアルタイム報告は難しいので、あとで、簡単に概要をまとめますね。この辺。

 
 ■Paper : Character Animation

 で、ようやくPaperを見ることが出来ました。
 良かった良かった。

 まずはじめに見たのがCharacter Animation。Paperはジャンルごとに分かれているんですよね。






 カートゥンキャプチャー(Turning to the Masters: Motion Capturing Cartoons / Christoph Bregler, Lorie Loeb, Erika Chuang, Hrishi Deshpande)が面白い。
 ピクセルをいくつか追跡してそれをポリゴンメッシュとして把握する、使い古された手法なのだけれども、それをアニメに限定して応用したところが斬新。





 それに対して、一番初めに発表のあったビデオフェイシャルムービーの自動合成(Trainable Videorealistic Facial Animation / Tony Ezzat, Gadi Geiger, Tomaso Poggio)は確かに最新の、すさまじいまでの技術だけど、使い道に困るところ。窓口の自動応対システムとか色々言っていたけど、明らかに研究先行の付け焼刃的利用方法で・・・
 いや、言いたい事はわかるんだけど、自動化するんだったら3Dじゃないとダメでしょ。2Dムービーだと、過去の俳優を復活させるとかの方法もあるけど、それは別の技術ですでに実用化されてるし・・・。でも、宇多田ヒカルを歌うフェイシャルムービーは秀逸でした。こういうのいいね。
 フェイシャルムービーは研究急務なジャンルではあるのですが、出力が2Dビデオだと、制作に手間がかかる上に応用が利かないので、かなり難しいところ。
 でも、これをテクスチャにして、3D化とかを研究したら面白いかな。Web3Dとかゲームインタフェイスとか。
 日本に帰ったら、お世話になっている大学院の先生に相談してみよう。

 続くモーション自動生成についての論文(Synthesis of Complex Dynamic Character Motion from Simple Animations / C. Karen Liu, Zoran Popovice)は、今までとは考え方が違う面白い手法。Character Studioなんかも凄いけど、あれは結局、実写のモーションデータがベースだもんね。キャラクター中心の上下移動に合わせて生成される完全自動生成は非常に面白い。ロジックで生成しているから、足が何本に増えてもいいというのは凄いな。
 ・・・これが実用化されたら本当に便利だなあ。




 その後、バーチャルキャラクターアニメの自動生成の話。(紹介は避けます・・・)
 彼とその論文の出自を見れば、MITのメディアラボ! これはさぞやと思いきや・・・
 ・・・しかし・・・
 これがつまらない。
 数式の説明も無ければ、デモも下手。ただクオリティの高いカートゥーン調のグラフィックだけが流れる。・・・これって、カートゥンレンダーの論文じゃなくって、モーションの論文じゃなかったっけ?
 彼の前の3人の女の子の論文が最高だっただけに、あまりにつまらない。
 当然、次々と席を立つ聴衆。
 聴衆も世界中から忙しい時間を割いて集まった一流のCG屋。つまらない論文に割いている時間など無いのだ。皆、そろいもそろって部屋の外で携帯電話をかけ始めたり、ノートパソコンで仕事を始めたり・・・(paperはFull Conferenceのみなので、一流かどうかはともかく、相当のCG好きじゃないと部屋には入ってこれないのです。ちなみに私もこの論文に切り替わってから、すっかり日記執筆モード)
 アメリカの有名大学を出て、それなりの経歴があれば、大学や権力の力でこの場に来ることは実は簡単なのです。でも、そこから先は・・・
 ・・・気づけば席はがら空きに・・・
 ・・・ショックを隠せずに、最初の自信もどこへやら、途切れ途切れの発表をするおじさんの姿が痛々しい・・・。まあ、これでキャリアが終わるわけではないんでしょうけど、この反応はショックでしょうねえ・・・
 有名だからといって、凄い研究所にいるからといって、油断するとあっという間に愛想を尽かされる。これも、SIGGRAPHの健全な姿なのです。


 あ、くそっ!
 ちなみに今、二つ隣の席の奴が突然立ち上がって会場から出ようとして、私の足を踏んでいった!
 サンダルだから、めちゃくちゃ痛い!
 思わずうめくが、詫びもせず、相手は逃走。
 畜生、あんにゃろ!また日本人だよ!!

 ・・・つくづく論文とかそういうレベル以前の問題が多いなあ、わが同朋は。
 こりゃ、昨日の某メーカーパーティでの仕打ちも判るなあ・・・とほほほほ。

 
 ■基調講演


 そしていよいよ、今日は基調講演の日。
 こういうの、普通は初日にありそうなものですが、SIGGRAPHでは中日の今日にやります。



 まずは、お偉方が出てきて、SIGGRAPHの今後の方向性について述べます。
 なんでも今後は世界規模の団体にふさわしくするため、大いに内容変更を行うとか。
 まずは、運営委員会の多国籍化と、下部組織としてのAFRIGRAPH設立(これはすでに効果を表していて、人種構成などが去年よりもかなりましになっていました)。そして目玉は、初の米国外開催になる、秋口のオーストラリアはメルボルン大会。日数的にはたった4日間ですが、それでも米国外でやるというのは凄い。後はオンライン機能の強化。SIGGRAPHの会員でさえあれば、世界中どこにいてもネットで情報を共有化できるシステムを作り上げるそうです。




 このように、どんな保守的なところでも着実に変化を起こそうという努力があるのが米国の良いところ。日本では例えば古典芸能とか公務員社会には<そういうもんでしょ>という諦めがあるけど、こちらはそういう保守的なところですら、遅いとはいえ変化への動きがある。だから、国として活気があるんですよね。
 続いて功労者を称えるAward。
 涙ながらに語る人もあれば、「失礼、チャックが開いていた」から語り始める人もいて、これもまたSIGGRAPH。
 その後、キーノート本編へ。




 演者は、Dyson女史。社会とテクノロジに関する本も出していて、どうやらこっちでは有名人らしい。
 基調講演自体は、MicrosoftとUSA政府、そして各国政府がいっせいに国民統制に入っていることへの警鐘を鳴らした、すばらしい内容でした。
 ・・・この会場、Microsoftの人間も多いのに(笑)
 実際、こちらに来て思いましたが、例のテロ事件からこちらの極右的な動きに対して、警鐘を鳴らす人が出始め、国民もそれに耳を貸し始めつつあるな、と感じました。一連の大企業スキャンダルと、大統領スキャンダルも、要はその流れの一環な訳で。「国を守るために国家とそれを支える大企業に全てをささげよう!」という動きのアンチテーゼなんですよね。
 国中がワッと一方に向かっても、必ず冷静に意見を述べる人が出てくる。これがアメリカの良いところ。
 それに比べて日本は、有事法制で人権を制限の方向に唯々諾々と進めちゃおうとしているとか・・・。人権を守るために必死に戦って、国を維持するために色々と考えているこちらの人々に比べて、情けない限り。国を守る法律で人を滅ぼしてどうするよ。不況になると日本は文明を捨てて凶暴化するという俗説が世界の常識化しているけど、それを肯定するかのように本当に二流国化してるなあ、わが国は。
 あと、クリエイターなどの一般人が政治について語ることを煙たがる雰囲気も強いですね、わが国は。政治は生活や商売に密接に絡んでいるから、米国では皆がそれに関心があり、当然、CGの話をしていても政治の話は絡んできます。
 こういうの、市民としては当たり前のことなのですが、日本では、市民と臣民の区別の付く人ですら少ないですからねえ・・・
 演者が会場にいる多くの日本人を意識して、日本でも政府によって権利が脅かされているんだから気をつけよう!と訴えるたびに、なんだかちょっと悲しくなります。




 その後、彼女の書いた本を購入。
 もちろん、ちゃんと御本人にサインをしてもらいました(笑)

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