で、夜はというと、某ソフトウェアのPressミーティングに出席。
今回は準備不足でソフトウェアの予習をしていないので、明日以降の仕事に備えて色々聞かなきゃね。
迷いに迷ってたどり着いた場所は、某ホテルのプレジデントルーム・・・
うひゃあああああ!!
部屋がいくつあるんだ!?
バーまで付いてる!?
しかも、パーティ会場になっている広大なテラスの真下は、アラモ!!??

・・・いやびっくり。
生まれて初めて入りましたよ、あんなところ。
職業柄、色々なパーティとかで高級なところには慣れているつもりだったけど、所詮は日本での話。やっぱり金持ちの国アメリカの本物の金持ちの泊まる部屋は違うなあ。
と、いよいよディナー開始。
ところが、ここで思わぬ事態が。
最近のアメリカでは、さまざまな人種を強引に混ぜようとする「人種のるつぼ」方法をやめ、「人種のサラダボウル」といって、各人種、中でも特にアジア系の人種が<区別>されて扱われるのが普通なんです。ところが、我々は生粋の日本生まれの日本育ちの日本人。日本人は、そうした<区別>をする側ではあっても、される側の経験は無いのですよね。
楽しげに話し合う白人の方々を尻目に、日本人と韓国人だけ、高台に備えられた別のテーブルに促される。なるほど、最高の席に私たちを分けることで、あくまでも差別ではなく、サラダボウル的な区別だ、という気配りなわけですな。人種差別に敏感なアメリカらしい話です。
すると、当然のことながら、瞬間的に凍りつく我々日本人Press。何かミスがあった気配を感じて真っ青になるソフトウェアメーカー。ただならぬ雰囲気におどおどするホテルスタッフ。
そうした、かなりの緊張感の中でディナーが進みます。
文句を言うわけにもいかず、慣れない区別に苛立ちを高める我々。ミスは無いはずなのになにやら様子が変なことに焦りを見せ、ついにはそわそわし始めるメーカー。
・・・なるほど、こりゃ、メーカー系プレスミーティングに二年連続で出る日本の出版社がいないわけだ。(日本人向けの広告効果を考えれば、プレスミーティングに限らず、この辺にかなり改良の余地ありと思うんですけど、どうでしょう? 米国企業の皆さん?飯に懐柔されるPressもいないと思うけど、ユーザーミーティングあたりできちんとやれば、ただ単にテーブルを皆一緒にして通訳の出来るスタッフを置くだけで、予算をかけずに面白いくらいの広告効果があるのでは?)
こりゃあかん。話は聞いたし、とっとと帰ろう。そう、日本人皆が思い始め、相談を始めたときでした。
一輪のバラが会場に舞い降りたのは。
会場がざわめき、ふと顔を上げると、2人の女性が遅れていらっしゃっていました。
駆け寄るメーカースタッフ陣。
どうやらかなりの重鎮のようですが、二人とも若く、美人。
どこかの社長の娘さんか奥さんかな?
しかし、状況が状況だけに、空席はわれらがテーブルのみ。どうするんだろうなあ。
そんなことを考えながら見ていると、お二人のうちの少々きつそうな方の方が、メーカーの人になにやら耳打ち。メーカー側もわかったというように、いすを2客すばやく用意。きつそうな女性の方は我々にさりげなく挨拶をして、新しく用意された席へと向かってゆきました。
うん、お互いに不快感が極力無いように配慮した、見事な区別っぷり。アメリカですなあ。
・・・と。
もう一人の優しげな美人の方が、なにやら嫌悪感をちらりとみせたのは、その時でした。
しばしの逡巡の後、なんと、彼女は我等のテーブルに着席。
なにやらメーカーのお偉方が耳打ちするが、彼女は自然にかぶりを振る。
・・・ホテル側のミスかな?
でも・・・あの嫌悪感、妙だな。なんだか、私たちに向けられたものじゃない気が・・・?
「ともかく、ようこそ我等が<イエローテーブル>へ」
私が下手な英語でそうつぶやいた言葉は、彼女に聞こえたかな?
そして食事が再開されます。彼女のことで帰るタイミングを失い、もはややけ気味に楽しみ始める我々。そもそもメーカーさんも悪気があるわけじゃないし、仕事として考えれば、まだまだ聞いた方が良い話も結構ある。まあ、郷に入ったら、という奴で、慣れるしかないよね。
そうこうしている内に、同じテーブルの韓国のLee氏と私に、まったく偶然にも共通の友人がいることが判明し、下手な英語同士で話に花が咲きます。(ちなみにその友人はCG関係者ではありますが、別にSIGGRAPHとは関係ない人です。・・・よく考えるとこの世界、地球規模で狭すぎるぞ、ちょっと(^^; なんで日本で知り合った韓国の友人の知り合いに、アメリカのSIGGRAPHで偶然会うんだ???)
そんな中、件の遅れてきた彼女もごく自然に食事を開始。
そんなこんなで場が打ち解けてきたときでした。
彼女が私に話しかけてきたのは。
まず、彼女が興味を持ったのは、私が持ち歩いているマンガでした。私の会社はCG映像もCGを生かしたWebなんかもやっているけど、CGマンガが最も持ち運びやすく、見せやすいので好んで持ち歩いているんです。(ちなみに、キャラクター以外全てが3Dのマンガなんですが、きちんと処理をしているので、手描きにかなり近い表現になっています)
持ち歩いているマンガは、私が原案と台詞を考えたもの。自分の作ったものを褒められ、自然、打ち解けます。
ちなみに、お渡ししたマンガが戦争マンガで、しかもかなりの残虐シーンがあったのは内緒。
・・・というか、彼女自身そのページをちらりと見て、さりげなく無視してくださいました。
話を軽くあわせた後は、自然、SIGGRAPHの話になります。韓国のLee氏が、いかにも有能なメディアマンらしくエキシビジョンで発表された新商品のスペックデータについて触れます。中でもnVIDIAの<Cg>とその未来についての感想を求めました。すると彼女は、スペックデータも重要だけど、私はEmerging Technologyに重要性を感じるわ、と言って、企業が金をかけて作った商品よりも、学生たちが大いに持りあがって作り上げた新技術応用のイベントから始まり、CGの未来についてさらっと語ります。しかも、我々にもわかる平易な英語だけで。
・・・凄いな、彼女。
一見、ほわほわっとした感じの優しげな金髪美人。
しかし・・・なんだろう?
ふと、違和感を感じたのはその時だったでしょうか?
・・・そして、自然に名刺交換。
そのときに、その違和感の正体が判明したのです。
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<世界的に超有名なCG雑誌>
J.D.(仮名) 管理職編集者
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・・・ええっ!!??
きちんと情報を仕入れているCG屋にはとてつもなく有名で凄い、雑誌の管理職の人です。
道理で、違和感があるはずです。見かけはかわいいタイプの美人ですが、言うまでも無く、この人、めちゃくちゃ切れ者のはずです。あの違和感は、取材する側のはずの自分が取材されていた感覚だったんですね。いやはやびっくり。
正体が判ってから会話をしてみると、なるほど。とにかく知的。差別を、そして区別をも嫌い、礼儀としてミーティングには来たけどメーカーと馴れ合う気はさらさら無いという、本物のジャーナリストです。
私のようなバッヂだけMEDIAを付けている様なにわかジャーナリストが全開で頭を使ったところで、まったく敵いそうにありません。
バラのような美人だと思っていたら、ばっちり棘があったんですね。いや、バラというよりも、優雅に舞って、一瞬で獲物を捕らえる鷹かも。
J.D.今日はご同席できて、大変光栄でした。
お陰で非常に楽しい夕食が味わえました。
一見安全そうで、その、すばらしい切れ味は、まさに剃刀。
・・・なお、まかり間違ってコンテンツが大当たりでもして、いつかあなたに取材されることがあれば、精一杯気をつけることにします。