昼食後、午後のSessionに向かう。
すると・・・
あちゃ、Session Fullだ!
50人程度の狭い会場に、100人近くが押しかけていました。これは典型的な口コミ人気というやつ。
こういうことが無いように、出たいセッションには事前にしっかり並びましょう。
で。
もう一つ目をつけていたやつも、キャンセルドでお流れ。そこで、仕方なく会場内をうろつく・・・
しかし、杉山先生にお会いしたほか、特に何事も無く時間が過ぎてしまう。諸般の事情で極度の寝不足だけに、放って置いたら本当に寝てしまいそうだ。いくらなんでもそれは大問題。一応ここは学会なのだし。
・・・午後5時半まではまだあるし・・・買い物にでも行くか。
幸い、近くにマーケットスクウェアというのがあるという。ちょうどそこに知り合いもいるらしいし、SIGGRAPHバスも近くまで出ているので、早速向かうことにしました。
と、そちらに向かうバスの中で、ホテルに荷物を置きに帰る途中の深野先生と同席。マーケットスクウェアに行く、というと、先生、妙な顔をする。「いや、やめた方がいいと思うな・・・」
よくわからないが、まあ、大丈夫だろう。高をくくって、お散歩開始。
バスの運ちゃんもサービスを利かせてすぐそばまで送ってくれる。
いや、ありがたい、ありがたい。
で、マーケットスクウェアに向かうが、その前に、手前にあるスーパーでお買い物。
おおお、広い!
さすがはアメリカ。
喜び勇んで色々買い込んで、レジを済ませる。
英語が通じにくいあたりも、非常に好ましい。
さすがはテキサス南部。
と、店を出たところで気が付いた。あ、そうだ、写真を撮らなきゃいけませんね。
かばんを下ろし、ごそごそやる。サンアントニオは空気が湿っていて熱く、生まれ故郷の埼玉県に非常に似ているため、過ごしやすいな。
寝不足でぼおっとした頭でそんなことを考えながら、のほほんとかばんを漁る、と・・・
妙な、感じ。
気が付けば、前方斜め25メートルくらいのところに、薄汚い格好の白人の男が一人。
男は、こちらのことをちらちら見ながら、何気なく周囲を歩く。
なにやら妙な予感がして、立ち上がり、かばんを背負い直す。
マーケットスクウェアは、男とは反対側。後は彼に背を向けて歩くだけなのだが・・・
何か、いやな予感がする。
なんだか、背筋が泡立つような・・・
と、男は、とつぜん、不自然にシャツをめくり上げ、腹を見せた。
めくり上げたシャツで汗を拭く。
・・・妙だ。
まるで、何かを持っていないことを示しているかのように、腰周りをことさらに見せる。
顔はそっぽを向いているのだが、目が、こちらを見ているのがわかる。
・・・試しにこちらが少し動く。
男は、しばらく間をあけて付いてくる。
ふと、男の異様に大きく膨らんだヒップポケットが気になる。
見れば男の目は、どこか異様だ。
ストレートに言って、「飛んで」いる。
これは、ひょっとして・・・やばい・・・のか?
幸い、まだ場所はスーパーの駐車場。
大きく遠回りをし、慎重に方向を変え、200メートルほど先の、SIGGRAPHバスの止まるホリデイインに向かう。
こちらは相当に変な動きをしているというのに、男は、距離をとりながら、しっかりとこちらの動きに付いてくる。
・・・完璧にやばい。
気が付けば男と自分以外、人通りは皆無。
皆、車で移動するので、人がいないのだ。
・・・こんなやばいところをのほほんと歩いていたのか。
寒気が背筋を走る。
幸い車通りは多いので、極力車道側に寄る。
クラクションを鳴らされつつ、慎重に、慎重に、男に気が付かないフリをしながら、ホリデイインに向かう。
と、向こうにSIGGRAPHのバスが見えた!
バッヂをゆっくりと男を刺激しないように取り出し、大きく振る。
と、バスがゆっくりと目の前に止まる。
男は何気ないフリをして、離れて行った・・・
真っ青な顔色でバスに乗り込むと、なんと、そこには荷物を置き終えた深野先生がいた。
事の顛末を話すと、深野先生は言ってのけたのだ。
「だから言ったでしょ。やめた方がいいって」
聞けば、マーケットスクエアの近くは、結構危ない地域らしい。
バスの運ちゃんも、それを心配して近くまで送ってくれたのだ。
スーパーで英語が通じにくい時点で、私は気が付くべきだった。
いくらサンアントニオが安全とはいっても、それはあくまで観光地域だけ。
そこを離れれば、ごく普通のアメリカ。
そう、いくら埼玉県に似ていても、ここは、拳銃の氾濫する犯罪大国アメリカなのだ。
いくら寝不足とはいえ、今回はあまりに油断をしすぎた。
日本に無事帰るため、緊張感を持つことを心に誓った。