日記のページロゴマーク 2002年7月18日



 
 ■SIGGRAPHとは?


 SIGGRAPHとは、ACMというアメリカの学会の一部門で、グラフィック関連(GRAPHICS)の分科会(Special Interest Group)の略です。
 要は、基本的にはCG研究者やCGアーティストの集う学会の名前であって、決して<CG関係者の集うお祭り>の名前でも、増してや<最新情報の集う商品展示会>の名前でもありません。
 ACMには他にも多くのSIGがあり、近隣の研究で有名な学会には、SIGCHIなどがあります。(こちらはComputer Human Interfaceの研究などをしています。おなじみのSGIの論文などは、SIGGRAPHよりもこちらの方で載ることが多いようです。私(手塚)は個人的にヒューマンインタフェイスの研究などもやっているため、SIGGRAPHといえば、どうしても年次大会よりも論文集のほうが先に頭に浮かんでしまいます)

 しかしSIGGRAPHは、その年次大会が非常に大掛かりでエンターテインメント性に富んでいる所から次第に注目を集め、年々さらにさらに大規模化をしてゆきました。そのイベントは一週間にも及び、いつしか日本では、SIGGRAPHといえば年に一度開かれる年次大会の事を指すようにまでなっています。
 そこで発表される論文(論文本数は極めて少ないケド)や発表(これは、スケッチと呼ばれる準論文のようなものです)、さらには実際のCG制作最先端の現場で活躍しているクリエイターによる実際に商業利用されている素材を用いての技術習得のコース(ワークショップという奴ですね)、無数に展示される最新技術などなど、SIGGRAPHの年次大会は、CG関係者にとって最高の場所ともいえるのです。

 もちろん、問題も無いわけではありません。
 SIGGRAPHはその商業的成功ゆえに、きわめて保守的な学会であり、その弊害が非常に大きいことが関係者から常々指摘されています。(比較的早くから商業的に成功してしまったため、構造改革や意識改革の必要性が無いままに、21世紀まで生き残ってしまったのです)
 例えば、論文本数ですが、これは昔から、あまりに少なすぎることが指摘されてきました。しかも、その採用基準が不透明なところも問題で、かつては英語が下手だから内容を無視して落選させた、などといううわさが毎年のように飛び交っていました。(今はそれほどでもありませんが、採用論文本数の少なさは未だに大問題です)
 また、これはSIGGRAPH大会に行けばわかることですが、アメリカの保守的な社会にありがちなことに、いわゆるアメリカ主流派(WASP)の人々ばかりで、有色人種がほとんどいません。いえ、いるにはいるのですが、そういう人たちは私たちのような外国人がほとんどであって、米国人の少数派の人たちがほとんど見られないのも特徴です。(もちろん少数ながら、非主流派出身でも活躍なさっている方々もおられますので、一般的なお話として読んでください)
 昨年のSIGGRAPH2001でたった2人だけ私が会話できたアフリカ系アメリカ人の方は血気盛んな学生さんで、粋なダンスを踊りながら「白人優遇のこの学会に乗り込んできてやったんだ!」と息巻いていました。要は、それほどの覚悟がないと非主流派人種には来にくい場所なんですね。
 こういう問題も毎年徐々に変わりつつはあるようですが、まあ、この辺はある程度頭においておく必要はあると思います。

 あ、ちなみに、日本語がしゃべれる方はそれなりに多いですので御安心を。商業的にCGでは日本が大切なマーケットですので、結構皆さん日本語はお上手です。それに、私の下手な英語でも、一生懸命に聞こうとしてくださいます。ありがたい話です。(口の悪い人に言わせると、アメリカ主流派の上流社会では「日本人の奥さんを持つ」ことが一種のステータスなので、そういう方々は当然日本語がぺらぺら、なんだそうですが(^^;)

 まあ、そういうのがSIGGAPH(正確にはその年次大会)ではありますが、参加をしてみれば誰もが楽しいのもまた事実。
 今年はいったい、どんな素晴らしい研究や技術が見れるのか、また、どんな出会いがあるのか、楽しみでなりません。

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